「米中対立/新冷戦」論の死角という視点を探るために、本書『ユーラシアの自画像』が注目されています。この本では、ロシアのウクライナ侵攻を通じて明らかになった自由・民主主義国家と権威主義国家の対立が取り上げられています。しかし、現在の世界を捉えるためには、単に「米欧」VS「中ロ」の新冷戦の視点だけでは不十分なのではないかという問いが投げかけられています。
まず、非民主主義国を「権威主義体制」としてまとめて理解し、民主主義国との異質性を強調することで、ロシアや中国などの国々が専制主義の国であると非難される一方で、彼らがどのような世界観や価値観に基づいて政策を決めているのかが見えなくなる可能性があると指摘されています。
また、先進国が中国やロシアなどを主語として、開発途上国を客体として描くことが多いですが、むしろ開発途上国がなぜ彼らを選ぶのかという視点が重要だと述べられています。さらに、それぞれの国が先進国や中国、ロシアへの政策をどのように決めているのかを、内在的なコンテキストや国内政治のありようから理解する必要があると強調されています。
このように、本書では「米中対立/新冷戦」論が見落としがちな視点を提供し、より広い視野で現在の世界を理解するためのヒントを与えています。