横浜1963＜文庫版＞は、横浜で生まれ育った著者が初めて書いた社会派ミステリーです。物語は、1964年の東京オリンピックを控え、活気に満ちた横浜が舞台。横浜港で若い女性の死体が見つかり、事件は複雑に絡み合っていきます。
主人公の若い警察官・ソニー沢田は、米海軍捜査局に単身で乗り込み、日系三世の米軍SP・ショーン阪口と共に事件の真相を追います。しかし、過去の戦争の影が事件に立ちはだかります。
著者は、自身が横浜で生まれ育ったことから、1960年代前半の横浜の雰囲気を再現したかったと語っています。小説の中には、当時の横浜の視覚、聴覚、嗅覚、感覚に関する表現が詰め込まれており、読者に当時の雰囲気を体験させることを心がけています。
著者は、本作を通じて日米関係や戦後の歴史について考えさせるメッセージを込めています。日本の庶民が駐留軍とどのような関係を持っていたか、その背景にある感情を描き、読者に現在の国際関係について考えさせる意図があります。
『横浜1963』は、過去の横浜を知る者も知らない者も、当時の空気を感じられる作品です。
